「終わった……。」
レースが終わったのを見届けると、うなだれるようにベッドに倒れこんだ。
静寂の中で、パソコンから競馬実況の音声だけがボゾボゾと聞こえてくる。もはや何を言っているのかはハッキリとは分からない。何が起こったかは嫌でも分かっているはずだが、状況を冷静に理解することが怖くてたまらない。しばらく倒れこんだまま放心状態になり、動けなかった。身体が微妙に震えていることに気づいた。決して部屋が寒かったわけはないが、おそらく恐怖に似た感情に襲われていたのだと思う。
おそらく10分ほど経ってからゆっくりと身体を起こした。
「生きてる…。」
当たり前だが、そう思った。しかしながら、受け入れなければならない現実があった。
そう、私はギャンブルに負けたのだ。それもトータルで20万円ほど。意味がワカラナイ。
「この先どうしよう…。実質1か月タダ働きか?嘘だろ…?20万円あれば何が買えた?欲しがってたシューズだって2万円あれば買えたぞ?なんでこんなことに…。完全にどうかしていた。どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…。最終レースでまくるか…?イヤイヤ!無理だ!!それこそ破滅の始まりだ!!うん、どうにもできない。どうにもできないんだ…悔しい…。あたしって、ほんとバカ。」
哀れ、惨め、マヌケ、どうしようもない大馬鹿、消えてしまいたい……
どうあがいてもぬぐい切れない後悔の念が延々と襲い掛かってくる。もちろん物理的に死んだわけではないが、まるで魂が死んでいくような感覚だった。
ギャンブルで苦しんでいる人はこんなにも辛い思いをしているのかと思った。こんな思いは二度とごめんである。
元々、ギャンブルは好きな方だった。特に競馬自体はレースを見ているだけでも楽しいが、予想がバチっと当たった時の快感や、一瞬で配当金が返ってくる感覚もたまらない。それでも、これまでは無理の無い範囲で遊んでいたと思う。
この投稿では、そんなギャンブルに呑まれた地獄の3連休を振り返りながら、今後に向けての反省と対策を綴りたいと思う。ギャンブル依存症の怖さを少しでも感じていただければと思うし、この実体験を反面教師にしていただくことで私のような思いをする人が一人でも減ることを願うばかりである。
①3連休の当時を振り返る
1日目:狂狂の始まり
きっかけは、SNSの投稿でとある競馬のレース予想を見たことである。何となくその穴予想(3連複)に乗っかったところ、1500円が2万円ほどに化けたのである。
「マジかよ!ラッキー!」
ここで止めておけば、少し利益が出た状態で気分良く終われただろう。しかしながら、欲が出たのだ。中途半端に大きい金額を当てたのも良くなかったかもしれない。
「当たった分は賭けても良いよな。」
そんな思いから賭けを続行していくと、気づけば勝った分の利益は消えていた。
この時点で止めでおけば別にトータルでは損をしていないが、ここでギャンブル中毒者の方なら理解していただけるかもしれない謎の理屈にたどりついてしまうことになる。
「さっき儲けた分を損してしまった。儲けていた分は取り返したいなー。」
今思うと完全にダメな思考だと思うが、この時点で段々と熱が入ってしまい変なスイッチが入ってしまっていたと思う。制御が効かなくなっていたのだ。
そして負け金額が4万円に達した時、またしても謎理論を展開することとなる。
「いいかげんそろそろ当たるだろう!」
「オッズの高いところでまくってやろう!」
ダメダメだと思うが、当時の私は真剣である。本当に、おめでたいヤツである。
が、なんとこの時のレースでワイドの約30倍を当ててこの日のトータルではプラス4万円くらいとなったのである。
今思うと、これが一番良くなかったかもしれない。良くも悪くも当てたことによって、何とかなるじゃんといった具合に成功体験をしてしまったのだ。そんなこんなで、実は3連休の初日は割としっかりプラス収益で終えたのである。
タイムリープできるなら、この時に戻って自分をひっぱたいて言い聞かせてやりたい。
「欲しかったシューズを買え!なんならもう1足買ってもいい!それで終わりにしろ!!」
だが、むなしい妄想である。ではなぜ、その後破滅へと向かってしまったのか。敗因は以下の通りである。
「お、この人また面白い予想立ててるな。もしかしたら今日も勝てるんじゃね…?」
端的に言うとバカだと思うが、もっとそれっぽい言い方をするのであれば依存症ではないかと思う。もっと他に有意義な時間の過ごし方がないのかと、当時の自分に疑問をぶつけようと思えばかけてやりたい言葉は無限に出てくるが後の祭りである。
2日目:忍び寄る暗雲
上記の通り、またしてもSNSでの予想を見ながら競馬に勤しんだ。
この時はまだ上機嫌である。勝者の余裕(?)を感じながら掛け金を投じていた。共感してくれる方もいるのではないかと思うが、ギャンブルは掛け金を投じる時にも妙な高揚感を覚える。このドキドキ感が中毒を招く要因の一つでもあるかと思う。謎の自身に満ち溢れながら投資をしていたが、間で当たることはあってもトータルでは徐々に負けが込んできていた。
そうなってくると、段々と焦燥感やイライラした感情が芽生えてくる。資金が減っていくこともそうだが、なかなか的中しないことに不快感を覚え精神的な余裕も無くなってきていることに気づいた。
軸馬は当たっていたが相手がギリギリ届かなかったりと、馬券の買い方にもよるが絶妙に外すなんてことは本当によくある話である。だが、惜しかったとしても外れは外れでしかない。だからこそ、そういった外し方の方が余計にこたえるものだ。
「もう止めようかな…。まだトータルではギリギリプラスだし、別に損したわけではないしな…。」
どこかでそんな考えも頭をよぎった。熱が入っている自覚もなかったわけではない。賢明な考えだと思うが、結果的にそこで留まることはできなかった…。
「次のレースこそ!次こそ当てて終わる!」
そして、その日最終に位置付けたレースでワイド馬券を厚めに賭けて勝負した。「このレースで今日の負け分は絶対取り返す!」と、本当に良くない思考であった。
ダートの1200m戦だったと思うが、軸馬にしていた1番人気の馬は先行し良い位置につけていた。
「いいぞ!そのまま駆け抜けろ!!これは来たんじゃないか!?」
途中までは希望に満ち溢れていたが、その後絶望を味わうことになるとは思いもしなかったのである。なんと、軸馬にしていた馬が最後の直線で完全に伸びを欠きズルズルと後退していったのだ!
「嘘だろ……どうして………?」
かなりの不良馬場だったため、それも影響したのだろうか?いや、もうそんなことより、とにかく馬券は外してしまった。その事実だけが突き刺さり、しばらく唖然としてしまった。絶望である。
こうして、2日目は5万円負けとなり初日とのトータルではマイナス1万円の負けとなってしまったのだ。
3日目:破滅へのカウントダウン
あまりスッキリは寝られず、目覚めは悪かった。「昨日だけで5万円も負けちまった…。」後悔と自責の念、そしてイライラした感情が取れない。昨日のことを完全に引きずっていた。
「せめてトータルでトントンにしてやる!今日で1万円買ってやるぞ!」
もうダメダメである。完全にムキになってしまっていた。昨日の夜の時点ではもうこれ以上深追いしないでおこうと心に決めていたはずだが、結局この日も競馬に興じてしまったのだ。自分の意志だけではなく、強迫観念じみたものも感じていた。
が、冷静さを欠いていたこともあってか予想は思うように当たらず、気づけばじわじわと負けが込んいった。(詳細は割愛するが、合間にパチンコも挟んでいた。当然のように敗北して帰宅となる。)
とにかく捲りたいという思いが強くなり、段々掛け金も大きくなっていった。1レースにつき1~2万円の掛け金をつぎ込んだ。そうなると当然、外れた時の代償は大きい。
余裕がなくなってくると複勝やワイドに厚くぶち込みがちである。比較的的中しやすい馬券の買い方ではあるが、それでも当然外れる時は外れる。
「また外れた…。嘘だろ……。」
気づけばこの日だけで10万円近くの負けが込んだ。既に正気ではなかったと思う。次こそはという焦燥感にかられながら、まるで何かに取り憑かれたように掛け金を投じ続けていたのである。純粋にギャンブルを楽しむという感覚は一切なく、もはや自傷行為のようにも思えた。
「どうする、どうする、どうする、どうする……?」
最終と決めたレース。抗うことはできなかった。口座から追加で入金し、1番人気と2番人気のワイドに残りの残金10万円ほどをぶち込んでしまった。オッズは2.1倍ほど。投票ボタンを押す手は震えていた。
「ぶっこんでしまった…。」
レースが始まるまで気が気ではなかったが、レースを観るのももはや怖かった。
レースが始まった。出だしは悪くなかった。2頭とも先団の方に付け、順調のように思えた。
「頼む、どうか2頭とも3着以内に駆け抜けてくれ…!」
そして先頭集団が最後の直線に向いた辺りで、違和感を覚えた。2番人気の馬が伸びを欠いているように見えたのだ。
「嘘やろ…嘘であってくれ!!」
だが、違和感は正しかった。レースが完全に決着する前に、頭が真っ白になってしまった。結果、1番人気は3着以内を確保したが、2番人気はもはや何着であったかさえ覚えていない。
「馬券外に飛んだ」
認識としてはそれだけで、さして惜しくもなかったと思う。私にとっては、その事実だけが現実であり全てであった。最後まで相手候補で悩んだ3番人気の馬は見事に馬券内に入っていた。何とも皮肉なものである。
②当時を振り返って思うこと

この3連休では中央競馬、地方競馬、パチンコと手を出していた。どうせなら他にも収支が分かるような画像を残しておけば良かったと思うが、この画像だけでも当時の状況が何となくお察しいただけるのではないかと思う。
一番問題だと思ったのは自らを制御することができなかった点だと思う。負けが込んできて、もう止めた方が賢明だと頭の片隅では思いつつも、思い留まることができなかった。金額だけの問題ではなく、このような状態に陥ること自体が非常に危険だと思う。
金額としてはあまりに高いが、今となっては勉強代だったと割り切るしかないように思う。幸い、新たに借金をすることもなく何とか今まで通りの生活はできそうだ。もちろん、変に再燃しなければだが……。
③今後、気を付けたいこと
- 予算額をあらかじめ決めておく
「今月使っていい金額」を固定し、危機意識を高める。 - 辞め時を決めておく
「利益が出た時点で止める」など、自分なりの撤退ルールを設定する。 - 最初から勝てる前提で考えない
胴元が必ず勝つ仕組みを自覚し、「自分は勝てる」という幻想を捨てる。 - 負けた分を無理に取り返そうとしない
これこそが破滅への一番の近道。潔く負けを認める勇気を持つ。
④最後に
まともな判断などできる状況ではなかった。依存症としての症状が出ていたのではないかと思う。自らは勿論、その家族まで破滅に追い込んでしまう可能性のある恐ろしい病気である。もし依存症に苦しんでいる方がおられたら、相談窓口を活用していただくのも一つかと思う。
正直、この投稿を書くのも辛かったが、書くことで自分を客観視することもできた。ギャンブルで一発逆転起こそうなんて妄想は抱かないようにし、節度を持って楽しもうと思う。まぁ少なくとも、しばらくは自重するつもりである。
また、ギャンブルのことで悩んでいる方は、今後の自分を守るためにもギャンブルに関する良本を通じて知識を得ることも良いのではないかと思う。意志の力だけではどうにもならない『脳の仕組み』が、理解できるかと思う。
私も折を見て学んでいきたいと思う。もちろん、大いに反省の念を込めながらである…。


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