骨折や脳梗塞等で入院された患者さんが、在宅復帰を目指して集中的なリハビリを受けるための病棟がある。それが回復期リハビリテーション病棟である(回リハと略すのは全国共通?)。自身は現在、主にその病棟の患者さんの退院支援を中心に業務にあたっている。
疾患名によって入院可能な期間は決まっているが、リハビリによってどれくらい状態が改善されるかは患者さんによって様々である。言うまでもないかもしれないが、比較的若い方や元々のADLが高かったような人は割合早めに退院されていくことが多い。基本的には問題なく早めに退院できそうな人であれば、入院期間に限らず随時退院調整を進めていくようにしている。経営上の観点や、地域の受け皿としての役割をなるべく果たせるように病棟のベット回転も重要なのである(割合空き待ちの待機者の方も多いので、退院促進に関する上層部からの圧が大きいのもあるが…)。
Aさんという患者さんを担当させていただいていた時の話である。Aさんは大腿骨頚部骨折後のリハビリ目的で当院回リハへ転院されてきた方だった。入院前のADLは自立レベルの方で、認知機能も全く問題ない70代後半くらいの女性だった。リハビリも順調に進み、回リハへ来られて1か月半も経たないくらいで杖歩行も自立レベルまで状態は改善されておられたと思う。
そろそろ退院時期の相談をし始めても良い頃かなと思った私は、Aさんに「状態も良くなられて退院後の生活も問題なくできそうですし、次の面談時には家族さんも交えて退院時期についても相談できそうですね。」みたいな話をした覚えがある。ただ、その時のAさんの表情がどこか浮かないようにも感じられた。
翌日、Aさんのリハビリ担当職員さん(理学療法士)から、「昨日本人が、相談員から早く退院するように忠告されてショックだったと言っていた。実際もう退院はできるレベルの方だろうし本人が曲解しているのだと思うが、本人としてはできるだけここでリハビリをしてから退院したいそうだ。とりあえず情報として君に伝えておかないといけないと思ったよ。」とお話をいただいたのだ。
自身がAさんとお話した時はそんな話一切されなかったが、患者さんは毎日のように顔を合わすリハビリ職の方には比較的心を開かれやすいと聞いたこともある。この人にならと、そんな話をポロリとされたのかもしれないと思った。そんなつもりではなかったのだが、Aさんにとっては退院に対する圧をかけられたように感じられたのだと思い反省したことは今でも覚えている。その後色々とあって、結局Aさんは本人だけでなくご家族も退院期日ギリギリまでの入院を希望され、90日近い入院期間を経て無事にご自宅へ退院された。
いくら退院促進が必要だからと言って無理やり退院を調整するようなことは勿論しないが、患者さんや家族等が長期入院を希望するケースは回リハに限らずどの病棟であっても決して珍しくないことだとよく分かるようになった。Aさんのケースの場合は入院期間自体は守った上での退院だが、ケースによっては「ずっとここにおいてくれ」「もうあんな奴帰って来なくていい」などと、そもそも退院させる気の無い関係者ばかりで退院調整が難航するケースも度々出てくる始末である(幸い回リハはそんなケースは少ないが…)。そんな方々からしたら余計にかもしれないが、退院に向けての話を進めてくる我々医療ソーシャルワーカーのような存在は時に追い出し屋のように感じられるのかもしれないと思う。
全国どこの病院でも似たような問題はあるのではないかと思うが、退院に向けて必要な支援をお手伝いさせていただく役割なので本来は患者さんらの味方と言っていいはずである。何なら、制度のことなどこちらがお話すること以外でも必要に応じて我々を上手く活用してもらえたらくらいには思っている次第である。
しかしながら、そもそも退院を望まない関係者ら(本人含む)からしたら、どうあがいても我々は疎ましい存在に映ってしまうのかもしれないと思う。そんなこんなで、時には寄り添うだけでなく戦うことも必要である。




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